天然繊維の知識
天然繊維の分類には、原料および採取する部位による分類と、繊維の性質による分類がある。

 原料および採取する部位による分類
植物繊維 種子繊維 綿花、カッポク
靭皮繊維 ※1 亜麻、ラミー(ちょ麻)、大麻、ジュート(黄麻)、ケナフ、楮、三椏、サラゴ(雁皮)他
葉脈繊維 ※2 マニラ麻、サイザル麻、他
果実繊維 ココナツやし、へちま
茎幹繊維 麦藁、稲藁、い草、竹、葦、シュロ
動物繊維 毛繊維 羊毛、ヤギ毛、ラクダ毛、アルパカ毛、兎毛、牛毛、馬毛
絹繊維 家蚕絹(インドタッサ、中国タッサ、天蚕絹、くり虫)
雑繊維 羽毛
鉱物繊維   石綿
※1 靭皮繊維: 植物の茎や幹の靭皮(じんぴ)から採る繊維
※2 葉脈繊維: 植物の葉および葉柄から採る繊維

 繊維の性質による分類
−軟質繊維−(SoftFiber)
和名 英名 別名 分類 原産地
亜麻 FLAX,LINEN   亜麻科一年草 ソ連、エジプト、ベルギー、フランス、中国
苧麻 RAMIE からむし、支那麻、チャイナグラス いらくさ科多年草 中国、ブラジル、マレーシア
大麻 HEMP 線麻 桑科一年草 ソ連、イタリア、ドイツ、フランス
黄麻 JUTE インド麻,つなそ しなのき科一年草 インド、バングラ、パキスタン
洋麻 KENAF アンパリ麻、ボンベイ麻 あおい科一年草 タイ、インド、中国
ぼう麻   いちび市皮、ちんま青麻、きりあさ あおい科一年草 中国
−硬質繊維−(HardFiber)
和名 英名 別名 分類 原産地
マニラ麻 ABACA   芭蕉科多年生 フィリッピン,エクアドル
サイザル麻 SISAL ヘネケン、アケーブ ひがんばな科多年生 メキシコ、インド、フィリッピン、中国、ブラジル
マゲー   竜舌蘭 ゆり科多年生 ニュージーランド、フィリッピン
ニュージーランド麻   マオラン ゆり科多年生 ニュージーランド
コイア   ココナツファイバー   スリランカ、インド、東南アジア

 天然繊維の繊維組成
紙原料としての繊維組成 ※括弧内は平均値
繊維種類 繊維長mm 繊維直径(ミクロン) 灰分% リグニン% αセルロース%
針葉樹 2.7-4.0 32-43 1 26-30 40-45
広葉樹 0.7-1.620-40 1 18-25 38-49
小麦わら 1.1-1.5 9-13 6-8 17-19 33-98
米わら 0.5 5-14(8.5) 14-20 12-14 28-36
1.0-1.8 8-20 3-6 18-22 33-43
バガス 0.8-3.8(1.7) 10-60(20) 2 19-21 40-43
1.5-4.4(2.7) 7-27(14) 1-3 22-30 50-
エスパルト 0.4-2.4(1.5) 7-14(9) - - -
ケナフ木質部0.6 10-11 2-3 23-27 31-33
ケナフ靭皮部 2.6 16-22 1-2 1- 6 60-
マニラ麻 2.0-8.0 16-32 1 7-10 53-64
サイザル麻 1.5-4.0 20-32 1 7-10 53-64
コットンリンター 3.0-7.0 12-38(20) 1-1.5 3 80-85

 麻類の繊維組成
麻種類 セルロース 水分 ベクチン リグニン 脂肪蝋 水溶分 灰分
亜麻 81.99% 8.60% 2.72% - 2.37% 3.62% 0.70%
ラミー 76.00% 8.70% 6.10% - 0.20% 6.30% 2.90%
大麻 77.00% 8.80% 9.30% - 0.60% 3.50% 0.80%
ジュート 63.76% 9.86% - 24.32% 0.38% 1.00% 0.18%

 天然繊維の原料
亜麻(flax or linen)【靭皮繊維/軟質繊維】
亜麻は人類が用いた世界最古の繊維で、古来衣料として用いられ、エジプトで発達し、ローマ・イギリスを初め欧州各地に伝わった。繊維の時は通常フラックスというが,糸や織物などは製品でリネンという。植物学上亜麻科(linaceae)に属し、普通は一年生草本(多年生のものもある)で、多数の変種もあるが、その用途によって次の種類に分類される。
採繊用亜麻: 繊紬で優良な繊維がとれる青紫色の花の咲くものと、強くて粗硬な繊維がとれる白色の花の咲くものの2種がある。
採種用亜麻: 種子が肥大で充実し、含油量が多い。
観賞用亜麻: 短幹多枝で花の期問が長い一年生草。
以上のほかに美しい花の宿根亜麻、高山亜麻などがある。
栽培: 亜麻は土質によって繊維の品質・長さ・強力・弾力・硬軟・色合などが異なり、収機に大差がある。栽培適地は下層土の水分の多いやや砂質地がよく、その裁培には立枯病菌などを予防するため7年輪作によって収穫を図る。成育期間は冷涼で雨量が多く、また成熟期は温暖で晴天続きがよい。産地は、旧ソ連を第1として、ポーランド・リトワニア・ラトビアなどのバルト海沿岸諸国、ドイツ・ベルギ一・オランダ・フランスなどの北欧諸国、およぴ北アメリカなどである。ことにべルギーのクートレー亜麻(courtrai flax)は世界的に有名である。日本では北海道が主産地であったが、戦後は減少の一途をたどり,最近はほとんど栽培されてない。繊維を採る栽培適地は北緯48〜55°地方の寒帯に近い温帯地方が良く、種子からあまに油を採る産地としては亜熱帯の南米アルゼンチン・インド・北アメリカなどが有名である。亜麻は一年生草本で高さ0.6〜1mに達し、茎の直径は1.6〜3.0mmの紬い一本立で、葉は互生し、頭部に桔梗のような青紫や自色の5弁の花を開き、かっ色の米粒大の平たい種子を結ぶ。
繊維抽出工程: 靭皮と木質部,それに靭皮中のキョウ雑物をこう着しているゴム質の不溶性ペクトースを軽度の発酵作用によって分解し、可溶性ペクチンに変えて分離しやすくするために浸水(retting)をする。浸水が不十分ときは繊維の分離が難しく、度を過せば繊維の光沢、強度を失う。浸水のやり方は地域によって異なる。浸水が終って乾燥したものを干茎(flax straw)といい、亜麻の生産量はこの干茎量で表す。製線工程は砕茎(breaking)とムーラン作業(moulin,scutching)に別れていたが、現在では両作業を連続して行う自動製線機(flax scutching machine)に置換えられた。木質部がたたき落されて長い繊維の正線(scutched flax)だけが送出される。木質部とともに下に落ちた短繊維は粗線(scutching tow)という。あま茎から繊維抽出の歩留りは、生茎の浸水工程による減少が約20%、干茎から正線への歩留りは約18%、粗線の発生率は約10%程度である。
用途: ハンカチ、テーブルクロス、ナプキン、服地、シーツ、画布、心地

ラミー・ちょ麻【靭皮繊維/軟質繊維】
ちょ麻(苧麻)およぴラミーはいらくさ(urticaceae)科に属し、学名をベーメリア(boehmeria)という宿根性草本で、両者を混同しているが、工業上は両者を区別せずに取り扱っている。茎はまっすぐで1〜2mの高さに達し、太さは約1cmで根株から多数の茎を発生し、年に数回芽を出すから、その熟茎を刈り取って繊維を採取する。最適地では約45日で2mほど伸び、茎の太さは10−15mmとなる。この茎から採る繊維は麻類の中で最も優良なものである。この植物は次の種類に大別される。
白葉ちょ麻: 学名b.nivea。普通にちょ麻・支那麻・南京麻(chine grass)と呼ばれ、日本では白麻・からむし・しろお・ひうじ・まお・からそ、と呼ばれているもので、温暖の気候に適し、葉の裏は白色を呈している。この繊維は細く純白で光沢に富み、細糸を紡ぐのに適している。
縁葉ちょ麻: 学名b.tenacissima。ラミー、またはリーア(ramie or rhea)または毛把ともいい、熱帯の気候に適し、葉の表裏とも緑色を呈し、ジャワ・スマトラ・ポルネオ・マラッカおよぴメキシコなどに栽培され、繊維はやや太く強力に富み、紡績しやすい特徴をもっている。
栽培: この植物は湿地で砕けやすい肥土が適し、雨の多い温熱帯が最もよく、種子から発生するものは初年に1回、根切り植付けのものは2回を適度とし、次の年から1年に2〜5回連続採敢することができる。20年くらいは継続して、収穫できる。日本ではかって九州、中国地方で栽培されてきたが、1995年以降はほとんど生産されてない。
繊維抽出工程: 生茎から繊維を採るには、動力式皮剥ぎ機(decorticator)を用いる。茎が乾燥すると分離しにくいので、刈取り後直ちに機械にかけて木質部を砕き、たたき落して繊維を抽出する。これを天日乾燥したものが原料となる。繊維の採取率は葉っぱを落した生茎に対して4−5%である。
性質: 精練漂白をすれば絹のような光沢を現すので、絹麻とも呼ばれる。短繊維は15−30cmと長く、太さはデニールで言えば平均4−7dで太い。強度は綿の約2倍で、水に濡れると乾燥時の60%も強度が上がる。熱伝導性、吸水発散性などにすぐれているから夏期の衣料に適する。染色もしやすい。
用途: シャツ地(ポリエステル混紡)、服地やメリヤス(アクリル混紡)、寝装品、タオル、インテリ

大麻(hemp)【靭皮繊維/軟質繊維】
大麻は単に麻ともいい、わが国では最も古い衣料の一つで、綿の哉培が盛んとなり、また他の麻類が用いられるようになったため需要が漸減した。
大麻は桑科(moraceae)に属する一年生草本カンナピスサチバ(cannabis sativa)の靭皮から得られ、気候の変化に適応する性質があるので温熱両帯に生育し、湿潤な深耕肥土では優良な製品を産出する。特にイタリア大麻は有名である。主産地はソ連・イタリア・チェコスロバキア・フランスおよぴアメリカなどで、わが国ではかって栃木(野州麻)・長野(信州麻)・広島(麻苧・まお)などで産出し、戦時中は軍需品として3500トンの生産があったが、その後激減している。
栽培: 日本では3−4月に種子をまき、夏に高さが2−3mに達する。根を引きぬき,葉を切捨て、乾燥後に浸水処理を行って皮を剥ぐ、繊維の概観上の長さは1−2m、短繊維は平均25mmくらいである。強度、耐水力は亜麻より優れるが、硬くて弾性に乏しい。なお大麻の栽培は薬事法の関係で許可が必要である。
用途: 下駄の鼻緒の縄芯、服地

ケナフ(kenaph・kenaf・洋麻)【靭皮繊維/軟質繊維】
別名をガンポ麻(gambo hemp)・ポンベィ麻(bombay hemp)・アンバリ麻(ambari hemp) ともいい、インド・イラン・ソ連・エジプト・中国にも栽培され、一年生草本で2〜3mの高さに成長し、繊維はジュートに類似しているが白色柔軟でジュートよりもまさっている。用途は綱索・粗布・網・袋・製紙原料とする。二酸化炭素,窒素,リンの吸着がよく、地球の温暖化防止、水質浄化作用にも着目されている。タイや中国を中心に生産されているが、生産量の落込みが激しい。ジュートに比べて繊維が粗剛であるので10番手以下の糸をひくには適さない。これと同質の原料でメスタ(バングラデシュ)、ビムリ(インド)、ロゼル(インドネシア)がある。
なぜ今ケナフなのか: 最近、国内においてケナフが注目されてきた理由は、地球環境保全、特に森林の保護をめぐる国際的な世論動向の中で、木材繊維に代わる新しい非木材紙資源としての期待が高まってきたためです。 また、ケナフは炭酸ガスを多量に吸収するためCO2濃度の高まりによる地球温暖化防止につながると考えられています。
ケナフの特徴: ケナフの特徴はその栽培範囲が広く、短期間で収穫が可能です。(120-180日で7トンから12トン/ha)
紙資源としてのケナフの特性: ケナフ繊維の形状は、靱皮部と木質部では著しく異なっています。靱皮部(表皮に近い部分)の繊維は針葉樹の繊維とよく似ていますが、木質部(芯に近い部分)繊維は広葉樹の繊維よりさらに短めになっています。靱皮部のパルプは強度がすぐれており、木質部のパルプは崇高で不透明度が低く、全茎(靱皮部、木質部すべてをミックスしたもの)パルプは和紙風で、印刷もきれいに仕上がるという特徴があります。(資料:非木材紙普及協会)

いちび(市皮)(Indian mallow heapskin) Abtilon avricennae【靭皮繊維/軟質繊維】
商麻・青麻・栄麻・ございば・きりあさ・くさぎり、ひなはぎり(chine jute)ともいい、もめんと同しあおい科植物で、インド・中国に自生する1〜2mの高さの一年生草本である。中国では天津ジュート、青麻(チンマ)と称す。黄麻の代替品。

くず繊維(葛、コー麻、ko hemp)【靭皮繊維/軟質繊維】
まめ科(leguminosae)の宿根草本のくずつるから得るもので、日本・インド・中国に産し、長さは10mにおよぶ。くず根は粉砕・精製して、でんぷんをとり、くず粉として食料、その他のりとして広く用いられる。

いらくさ(蕁麻、nettle fibre)【靭皮繊維/軟質繊維】
いらくさ科の植物で、いだいだぐさ・まむしぐさ・かいかいぐさ・馬くわずともいい、温帯地方の各地に産し、わが国でもいたるところに自生する多年生草本であり、1mに成長する。

サン麻(sun hemp)【靭皮繊維/軟質繊維】
まめ科植物の靭皮から採取するものである。一年生草本で2〜3mの高さに成長する。大麻に似た検鏡構造を有し、インド・南洋に産する。綱素・包装用布に賞用され、ジュートに代用される。

オヒョウ【靭皮繊維/軟質繊維】
この繊維は北国の山地に産する7mの高さに達する落葉喬木のにれ(楡)科(ulmaceae)のオヒョウから採るもので、アツニともいう。靭皮は白色または淡黄色で堅ろうであるから、北海道アイヌ人は厚司(あつし)という織物をつくって常用している。

ニュージーランド麻(new zealand hemp)【葉脈繊維/硬質繊維】
ニュージーランドに多く産し、わが国でも暖かい所で栽培され.マオランと称している。ゆり(百合)科(liliaceae)に属する多年生植物で葉は長さ1〜2m、幅6〜8cmの針刀状をなし、4年ぐらいで成熟する。

アナナス繊維(ananas fiber)【葉脈繊維/硬質繊維】
これはパイナップル(鳳梨)繊維(pine-apple fiber)ともいい、南アメリカ・南洋の熱帯地方に産す。これには果実をとるものと.繊維をとるものとがあり.繊維は絹草の名があり、非常に細く絹様の光沢があって、柔らかで耐水性があるから織物に供される。